音を聞いて、プレーする野球があります。とてもエキサイティングで楽しいスポーツです。そうした野球をご紹介したいと思います。
Beep Baseball – ビープベースボール

2026年8月アメリカ・イリノイ州、シカゴで、Beep Baseball World Series 2026 が開催されました。
視覚障害のある方たちによる野球の1つであるBeep Baseballの頂上決戦です。
Beep Baseball とは視覚に障害をもつ方々もプレーできるよう考案されたアメリカ発祥の野球の一種です。
1975年9月に最初のワールドシリーズがミネソタ州、セントポールで開催され、翌1976年にはNational Beep Baseball Association(NBBA)という運営組織がシカゴで設立されました。
Beep Baseballはヨーロッパにも紹介されていて、主に、フランス、ドイツ、イタリアでプレーされています。
イギリスでは、2013年、国内初の本格的野球施設、Farnham Parkがオープンしましたが、この年、さっそく、Farnham ParkにてBeep Baseballをイギリスに紹介するイベントが行われました。
アジアでは台湾の参加が古く、台湾は2000年のBeep Baseballワールドシリーズの開催国でもありました。50周年記念の2026ワールドシリーズにも台湾はアジアの国としては唯一、参加しています。
Beep Baseballの基本ルール
Beep Baseballのルールについて簡単にご紹介します。
チームは6人の視覚障害者と3人の晴眼者で構成されています。
晴眼者はピッチャー、キャッチャー、スポッターという役割があります。ゲームは芝生の上で行われます。
守備側のチームは6人の野手(ファースト、サード、ショート、ライト、センター、レフト)及びスポッターとなり、攻撃側のチームは、ピッチャー、キャッチャー、バッターが参加します。
バッターとピッチャーが同じチームから出るという点が、この競技の大変特徴的なところです。
ピッチャーは晴眼者であり、バッターが打ちやすいようにボールを投げます。
その時、バッターの名を呼び、ready, pitch(よーい、投げるよ、みたいな感じでしょうか)と声をかけます。
投げるボールはソフトボールくらいの大きさで、中にビービーという電子音(beep)がする仕掛けが入っています。

ピッチャーの掛け声とボールから出る音を頼りにバッターはバットを振ります。
ボールがフェアゾーン内に打たれると、ボールの飛んだ方向に応じて一塁または三塁ベースから音が発せられます。(Beep Baseballでは二塁はありません)打ったバッターは音がしている方の塁に向かって走っていきます。
一塁、三塁ともに、ベースはホームから約30メートル離れたところに置かれていて、高さが約1.5メートルある柱状のものです。柔軟性のある素材でできていて青いカバーでおおわれています。

守備チームがボールをキャッチする前にバッターがベースに到達、タッチすれば得点になります。
ベースに到達する前に捕球されてしまえばアウトです。
あるいは、打者はバッターボックスにて4ストライクでアウトになります。
守備側のスポッターというのは晴眼者の役割で、野手にボールの方向を声をかけて教えます。
ただ、どんな風にでも声をかけられるということではなく、グラウンドのエリアごとに1から6までの番号がふられており、打球が1回飛ぶことに、1度だけ、どの方向にボールがいっているか該当するエリアの番号を発声することができます。
野手は、時にフィールドに寝そべるようにして、ボールを追います。ボールからする音とスポッターの声が頼りです。
1ゲームは通常、6イニングですが、12点以上差がつくと、そこでコールドゲームとなります。
2026年はNBBA創立50周年を迎え、競技人口も増加中のようです。
現在、Beep Baseballのチームは全米各地に合わせて200以上、存在しています。
2026年6月にはメジャーリーグ、ボストン・レッドソックスの本拠地であるフェンウェイパークでも試合が行われました。
2026年ワールドシリーズの様子が YouTubeでも公開されています。(約2時間20分の動画、National Beep Baseball Association様のチャンネルより)
Blind Baseball – ブラインドベースボール(グランドソフトボール)

ところで、日本においても音をたよりにプレーする野球の歴史があります。
グランドソフトボールと呼ばれるものです。1933年、横浜公園運動場で初めて試合が行われたという記録があります。
ハンドボール用とよく似たボールを用いて行う、ソフトボールのルールを基本にした視覚障害を持つ方々を中心としたスポーツです。
チームは10人で構成されており、全盲のプレーヤーが4名以上は含まれている必要があります。
全盲のピッチャーがハンドボール用のボールとほぼ同じボールを転がし、バッターは、それをバットで打ち返します。走者が走っていく方向がわかるようにランナーコーチは声かけや、手をたたいて示します。各ベースは走者用と守備用、2つずつ用意されていて、走者と野手がぶつからないようになっています。
打者が打ち返したボールは、外野まで転がっていったとしても、動いている間に捕球されると、ヒットではなくフライアウトのような扱いとなり、バッターはアウトです。
この競技は誰が、いつ、どのようないきさつで始めたのか、はっきりしたことは不明ですが、少なくとも1933年に試合が行われた、という記録は残っているようです。
以来、日本では、グランドソフトボールが視覚障害の方々によってプレーされ続けてきました。2000年には、第1回全日本グランドソフトボール選手権大会が開催され、2026年からは、ブラインドベースボールと名称を改め、新たなプロモーション活動も始まっているようです。
(参考記事:
https://www.aj-gsb.com/content1.html 全日本ブラインドベースボール連盟様ホームページ)
最近の試合の様子が YouTubeで公開されています。(約1時間40分の動画、全日本ブラインドベースボール連盟様のチャンネルより)
投球OKを表すキャッチャーによる、パンパンパンという手叩きが、緊張する、そして心躍る一瞬です。
Sound Baseball – サウンドベースボール

一方、イタリア発祥、WBSC Blind Baseball の世界大会が今年(2026年)はイタリア・トスカーナ、カティリオーネ・デッラ・ペスカーイア(Castiglione della Pescaia)で開催されます。
参加予定国は以下の通りです。
キューバ
チェコ
イギリス
イタリア
オランダ
パキスタン
台湾
アメリカ
前回、2024年のホスト国であったイギリスは、その後、チーム数も増え、実力を上げてきています。優勝の期待も大きいです。
アジアからの参加はパキスタンと台湾です。日本チームも近い将来、きっと、名を連ねることになるでしょう。
ここで、少しややこしいかもしれませんが、呼称についてです。
イタリア発祥の(WBC)Blind Baseball は、日本ではサウンドベースボールと呼ばれています。
一方、日本生まれの、ソフトボールのルールをもとにした競技は、グランドソフトボールと呼ばれていましたが、2026年よりブラインドベースボールというのが正式名称となっています。
僕は、ご縁あって、微力ながらサウンドベースボール発展のお手伝いをさせていただいています。
(お手伝い、というより、正直、一緒に楽しませていただいているといったところです)
サウンドベースボールの簡単なルールは以前の記事をご覧ください。
https://ji-onbaseball.com/uk-baseball6-blind-baseball/
より詳しいルールは一般社団法人 SOUND BASEBALL JAPANのホームぺージで紹介されています。
https://www.sbja.or.jp/
日本でもサウンドベースボールの認知度が僅かずつですが、上がってきています。
個人的には、イギリスでの野球の黎明期と似たものを感じます。
まだ野球など、ほとんどの人が知らなかったイギリスで、野球好きなイギリス人やイギリス好きな外国人野球経験者がまず自分達が楽しみながら、その楽しさや面白さを少しずつ、細々と、でも確実に浸透させていきました。
今では、ロンドンシリーズといってメジャーリーグの試合も行われ、WBCにもイギリス代表チームが参加し、年々、チームもプレイヤーの数も増え…と大変な発展ぶりです。
もともと野球が根付いている日本ですから、サウンドベースボールの広がりはもっと早いと期待したいところです。
Sound Baseballの活動
現在、練習は、埼玉県所沢市内で行われることが多いです。
参加人数も少しずつ増えています。
練習では視覚障害者と晴眼者が一緒になって、それぞれの役割を担います。

視覚障害者プレイヤーは黒のビブス、晴眼者サポーターは白のビブスを着用して練習
これまでは、フットサル場を利用しての練習だったのですが、先日、初めて、野球グランドを使っての練習となりました。
Beep Baseballは、電子音のするボール、Blind Baseball(グランドソフトボール)は音のならないハンドボールくらいの大きさのボール、そしてSound Baseballは、中が空洞になっていて、そこに鈴が入ったソフトボールくらいの大きさのボールを使います。

ウォーミングアップの後、守備とバッティングに分かれて練習を行います。
どちらも、ボールに入っている鈴の音が頼りです。
鈴の入ったボールと並んで、ピッチャーがいない、というのもサウンドベースボールの特徴といえるでしょう。
打者は、野球のノックを行うように、自分で軽く投げ上げたボールを自身が持っているバットで打ちます。
打ったボールがフェアゾーン内に転がっていくと「フェア」と宣告され、打者は、電子音が発せられている一塁に向かって走り、一塁には留まらず、そのまま二塁を目指します。
二塁と三塁にはクラッパーという音の出る道具を持った晴眼者によるアシスタントがいて、走者が塁へ到達する助けとなるようクラッパーを鳴らして合図を出します。

二塁と三塁で、クラッパーは、それぞれ違った音が出るようになっており、走者が聞き分けられるようになっています。
一方、守備陣は、転がってきたボールを捕球します。鈴の音を頼りに、そして、できるだけ広い範囲でボールを捉えられるよう、地面に横になって身体全体を使って、転がってきたボールのありかを探ります。

守備位置につく時、プレイヤーは前に並んでいるプレイヤーの肩や背に手をかけ、連なって進みます
捕球したら、すかさず、二塁へ送球します。二塁手は晴眼者で、送球がずれないよう声を出して場所を支持します。
イタリアでは二塁を「デュエ」と言うようで、それに倣って、サウンドベースボール・ジャパンの練習中も「デュエ」、「デュエ」と声掛けをしています。
練習中の音声です。
打った選手が二塁へ到達するまでの様子です。フェアーを宣告する声、一塁ベースの電子音、二塁ベースサポーターが叩くクラッパーの音が聞こえます。
サウンドベースボールを少しでも感じていただけたら嬉しいです。(セミの鳴き声がすごいです…)
一緒に練習に参加していると視覚障害を持ったプレイヤーの方々が驚くほど早く慣れていき、上達していくのがわかります。
音や声の助けがあるとはいえ、どうやって、あんなに正確な方向へ投げれるのだろう、走れるのだろうと、心底、びっくりしています。
練習の合間の休憩時間や終わってからのひと時は、ちょっとした社交の場でもあります。
冗談を言い合ったり、情報交換し合ったり、笑い声があちこちから聞こえてきます。
視覚障害を持った方々、サポートでいらしているガイドヘルパーの皆様、みんな一緒です。
プレイヤーの方々は、どんどん熱心になってきていて、休憩時間中もルールについての確認や、守備やバッティングについてのアドバイスなどをし合っています。
楽しいのが一番です。
関わらしていただいている中で、
サウンドベースボールとは、
目が見えない方たちが参加できるように調整、修正された、というより、ブラインドという特性を十分に生かすための競技なのだと感じています。
Beep BaseballやBlind Baseball(グランドソフトボール)については、僕自身は体験したことがなく、公開されている動画などを通して知るのみですが、両競技も、きっと同様だと思います。
どの競技もプレイヤーの方々が明るく、楽しそうです。こちらまで、わくわくした気分になります。
支援させていただけていることに感謝し、今後も「音で楽しむ野球」全般を応援していきたいと思います。
最後に、ご紹介させていただきましたBeep Baseball, Blind Baseball, Sound Baseball のルールにつきまして、筆者なりに調べ、非常に簡単にまとめさせていただきました。最初の興味を持っていただけるようにとの思いでまとめましたが、競技全般を知るには不十分と承知しております。また、誤り、不適切な箇所がありましたら、お詫びいたします。お気づきの点など、ご指摘いただけますと幸いです。

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