イギリスの代表的野球グラウンド:ファーナムパーク(Farnham Park)

イギリス・ファーナムパーク野球グラウンド
じーおん⚾べーすぼーる

イギリスにも野球場ってあるの?

もちろん、あります。

イギリスでは野球は人気のあるスポーツではないから、野球場もあまりないのでは?

確かに、日本には、公園、学校敷地内、河川敷など、野球ができる施設はたくさんあります。それに比べると、イギリスでは野球用の施設は一般的ではありません。

イギリスではどんなところで野球をするの?

では、イギリスの代表的な野球施設を一つ紹介します。

僕は約16年間、イギリスで草野球をプレーしました。野球グラウンドは少しずつ充実したものになってきています。最初の頃は、原っぱでプレーしているようなものでした。そんな時期にオープンしたイギリスを代表する野球グラウンドをご紹介します。

イギリスやヨーロッパの野球に関心のある方は、是非ご覧ください。

イギリス初の本格的野球・ソフトボール専用グラウンド

ファーナムパーク(Farnham Park)はイギリス初の本格的野球・ソフトボール専用施設として2013年7月にオープンしました。

それ以前から、各野球クラブが、公園や学校施設等の一部を長期で借り、野球がプレーできるように設備を整えて、自分たちのホームグラウンドとしていました。これら各野球クラブのホームグラウンドも年々、規模や設備が充実してきていますが、十数年前までは、原っぱでプレーしているという印象が強かったのです。

ファーナムパークは、そんな風に、まだ整備しきれていない野球場が多かったような時期に、イギリスで初めて、野球・ソフトボール専用グラウンドとして作られた場所です。

「ロンドンの西の方にちゃんとした野球場ができるんだって」僕が最初に耳にした情報は、こんなものでした。

本格的野球場-こんな話だけでも、当時のイギリスの野球ファンにとっては、夢のようで、わくわくして、楽しみでしょうがない、という感じでした。

イギリス初の本格的野球グラウンド建設は長い計画と挑戦の賜物

ファーナムパークはロンドンの中心から車で1時間くらいのスラウ(Slough)という町にあります。広大な公園の一角を野球、ソフトボール専用施設とする開発計画が2009年から始まりました。2013年夏に野球グラウンドが1面、ソフトボールグラウンドが3面完成し、オープンとなりました。

その後もプロジェクトは進められ、オープンから10年が過ぎた2023年には、野球、ソフトボール合わせて5面のグラウンド(5面のプレーグラウンドのうち、2面は野球ソフトボール兼用となっています)に加え、クラブハウス、バーも備えた充実した施設となりました。

球場建設にあたっては、公園のもともとの砂質が水を含みやすいものであったので、表面の土をはぎ取り、野球をプレーするのに適した土に入れ替え、平らにならしたり、グラウンド内の芝生が生え揃うために作業を中断したりということがあったそうです。オープン直前には、細かい仕上げ作業に、多くのボランティアもかけつけ手伝ったそうです。ファーナムパークグラウンドの開発は、天候や環境に挑む骨の折れるプロジェクトでありました。

参考記事:

Baseball and Softball - Agripower Contractors
Agripower have recently been appointed to construct 5 purpose made Baseball/Softball fields for the UK governing body, B...
Farnham Park due to open in early June – mister-baseball.com

イギリスの本格的野球グラウンドでプレーした印象は

僕が、初めてファーナムパークでプレーしたのはオープンの年、2013年9月のリーグ決勝ラウンドの時でした。

初めて足を踏み入れた時は、ここがそうかと、やはり新しい、今までの草むら空き地とは違う場所でプレーするのは晴れがましい気分でした。が、ライトを守っている時、何かにつまずいてしまったのですが、よく見ると野球グラウンドの外野にソフトボール用のフィールドが設けられており、そのフィールド内の土と芝の境目に足をとられそうになったのでした。

こういう造りにするんだなーと、ちょっと苦笑いしたのも覚えています。

とはいえ、当時としては、そして今でも、芝も美しく、きれいに整えられた立派な球場で、イギリスの野球施設も、ここまで来たのだなーと思いました。

グラウンドはセンターまでの距離121.92メートル、ライト・レフトまでの距離各99.05メートルです。(東京ドーム:センターまで122メートル、ライト・レフトまでの距離各100メートル)これまでの原っぱ球場に比べると、ホームランは出にくいかなという印象でした。

僕がイギリス草野球リーグでプレーしている間(2020年まで)は、トップリーグであるナショナルリーグのプレーオフ決勝戦までいかないと、ファーナムパークでプレーすることができませんでした。あとは、運よく開幕の試合でスケジュールが合うとプレーできることがありました。なので、ファーナムパークで野球ができる、というのは、少し特別感があって、嬉しい気分になりました。

ファーナムパークはオープン以降、イギリス野球代表チームのトレーニンググラウンドとして、そして国内野球リーグのプレーオフを始め、野球とソフトボールの国内、国際試合、大人だけでなくリトルリーグやユースの試合など多くのイベントで利用されているイギリスを代表するグラウンドとなっています。

ロンドンシリーズ2024開催に先立つ6月4、5日には、ファーナムパークにて、Europe Development Tournamentが行われました。

ヨーロッパ各国から15~20歳のトップレベルのアマチュア野球プレーヤーが約90名集まり、MLBのスカウトも見守る中、ワークアウトや試合を行うものです。

ヨーロッパ、特にイギリスから有望な選手が発掘され、将来メジャーで活躍するようなことになったら嬉しいです。

グラウンドの管理・運営を行っているイギリス野球・ソフトボール連盟(Baseball/Softball UK)

ファーナムパークの運営、管理をおこなっているのはBaseball/Softball UKという組織です。Baseball/Softball UKは2000年に発足したイギリスに野球とソフトボールを普及させることを目的とした団体です。

『イギリスのどの公園でも野球やソフトボールがプレーされる未来を』という思いで、発足以来、野球、ソフトボールの普及、レベル向上に必要な資金調達、両スポーツの草の根的な普及活動とを熱心に続けています。

僕がイギリス野球に初めて参加させてもらったのは、20年近く前のことです。その頃は、イギリスで野球を知っている人は、あまりいませんでした。野球チームも少なく、メンバーも十分に集まらなかったり、ということもよくありました。それが今では、リトル、小学校、中学校、高校、大学、大人一般の間で野球、ソフトボールがイギリス全土に普及しています。とはいえ、野球人口はまだ30,000人に満たないのも現状です。

しかし、日本やアメリカのように野球がポピュラーな国では、プレーしないまでも、野球を知らない、一度も見たことがない、という人はいませんが、イギリスでは、野球を知らない人がほとんど、というところからのスタートでした。今や、野球イギリス代表は2023年WBCの予選突破を果たしています。MLBの公式戦、ロンドンシリーズでも数万人の人が観戦に来ています。

これは、本当にすごいことです。これほどまでのイギリス野球の発展に尽力してきた多くの人や組織の中心的存在がベースボールソフトボールUK(BSUK)です。

Farnham Park | The Fields at Farnham Park
BaseballSoftballUK is the national development agency for baseball and softball in the UK. Find news, events, the youth ...

まとめ

2013年、イギリス初の本格的野球・ソフトボール専用グラウンドがオープンしました。ロンドンの西、スラウという町にあるファーナムパークです。

それまでイギリスで野球がプレーされていたのは、日本の河川敷のグラウンドよりはるかに設備の劣る場所でした。マウンドも芝もきれいに整備され、外野には常設のフェンスがある、そんなファーナムパークは、オープン当時、とても画期的で素晴らしい場所でした。

ファーナムパークは、今では5面のグラウンドを有するイギリス代表的な野球・ソフトボール専用施設です。

こうした施設が造られ、野球やソフトボール人口が増え続けているのはBSUK(ベースボール・ソフトボールUK)という組織を中心とした地味で継続的な草の根活動のおかげです。

まだまだ先のことですが、イギリスにもプロ野球チームができて、立派なスタジアムも造られ、アメリカのマイナーリーグではなく、イギリスでプレーする選手がWBCに出て決勝トーナメントに進出するようになったら…わくわくする話です。

このブログはイギリス野球、ソフトボールとそれに関わる全ての組織、人々を応援しています。

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