イギリスにおける野球人気は?地味ながら上昇中。ロンドンシリーズも開催!

イギリス野球場の例
じーおん⚾べーすぼーる

イギリスに野球なんてあるの?
野球やっている人いるの?
イギリスに野球チームなんてないでしょう。
メジャーリーグ公式戦、ロンドンシリーズが開催されたりしているけど、見に行くイギリス人っているの?

日本にいたら、多くの人がそんなふうに思いますよね。
野球が盛んな国は沢山ありますが、
ヨーロッパの国々で野球が人気というイメージはないと思います。

2023年3月に開催されたWBC、ワールドベースボールクラシックでは、
イギリスは初めて決勝トーナメントに進出を果たしました。
しかし、代表選手はイギリス国籍を持つアメリカマイナーリーグ所属の選手がほとんどで、
本国イギリスでプレーしている人はいませんでした。

イギリスに野球チームなんてないでしょう。あるの?

あります!

僕は約17年間、
イギリスで野球をプレーしました。
しかし、そんな僕自身も、イギリスに行く前には、イギリスに野球チームがあるとは思っていませんでした。

この記事では、僕が実際に見たり、感じたりしたことをふまえて、

*イギリスでの野球人気はどんなものか
*イギリスの野球ファンってどんな人たちか
*ヨーロッパ初メジャーリーグ公式戦、2019年ロンドンシリーズ開催までの道のり

についてご紹介したいと思います。

イギリスやヨーロッパでの野球人気についてご関心のある方は、是非ご覧ください。

イギリスにおいて高まりつつある野球人気

決してメジャーなスポーツとはいえないが

イギリスでポピュラーなスポーツといえば、
サッカー、ラグビー、テニス、クリケット、ゴルフといったところでしょう。
乗馬(競馬)、カヌーなども挙げられるかもしれません。

しかし、野球は・・・人気のスポーツとは言い難いでしょう。

野球のルールを知っているイギリス人がどれだけいるでしょう。
何人でプレーする競技だと即答できる人がどれだけいるでしょうか。

イギリスでの野球の位置づけは、その程度です。

ですが、実は、過去20年の間でイギリスでの野球の知名度、人気は上がりつつあります。

まだまだメジャーなスポーツとは言い難いですが、野球が好きなイギリス人はいて、野球をプレーするイギリス人もいます。野球チームもリーグも、きちんとした野球組織もあります。

イギリスの野球人口は増加中

2020年現在、イギリスでの野球及びソフトボール人口は約22,500人だそうです。
2018年には18,000人ほど、2019年は20,000人を少し超える程度でした。(Statista より)。

BBF(ブリティッシュ・ベースボール・フェデレーション)という統括組織があり、
現在イギリス全土で約50の野球クラブがあります。レベルや年齢別に複数のチームを有するクラブもあります。

レベルに応じて5つのリーグがあり、そのうち1つは女子リーグです。

イギリス草野球を応援する人たち
草野球を応援する家族。野球を見て楽しむ人も増えています。

野球チームは現在、約100ともいわれていますが、チーム編成、クラブ編成はたびたび変わります。

メンバーが少なくなると2、3のチームをまとめて一つに統合することもあります。

チームのメンバーがイギリス人だけで構成されることが少なく、イギリス国外からの留学生、駐在員などがイギリス滞在中だけ参加するということが多々あるためです。

所属メンバーが増えてくると、またチームを増やしたりと、毎年、どこかのチームやクラブの状況が変わります。
しかし、全体としては、野球人口は少しずつ増えています

2005年に僕がイギリスで野球を始めた頃には、ロンドン近郊の野球チームは10に満たなかったと思います。何度も対戦しないとシーズンがすぐに終わってしまうのです。
近年はロンドン近郊の野球チームだけで30近くになっています。

また、僕が所属していたチームは、2005年は2チームあって、メンバー全部で40名くらいでした。クラブがプロモーションやリクルート活動を熱心にしたせいもあり、今では大人のチームだけで7チーム100名以上になっています。
子供のチームも入れるとそれ以上になります。

イギリスの野球ファンとは

プレーヤーはイギリス人以外も多い

イギリスで野球をする人たちはどんな人たちかというと、
純粋なイギリス人も増えてはいるとはいえ、

はっきり言って日本人やアメリカ人のように野球が盛んな国から来た外国人が多いです。


次にイギリス人の中でも、両親のどちらかがアメリカ人、またはかつてアメリカに住んでいたことがあるなどというバックグラウンドにアメリカゆかりの人たちがいます。

イギリス人が野球好きになるきっかけ<メジャーリーグ中継とプロモーション活動>

生粋のイギリス人の中にも野球をプレーする人は増えています。

マイナースポーツである野球をイギリスの人は、どういうきっかけで知るのでしょうか?

2000年代、イギリスのチャンネル5というテレビ局で週末、時には水曜日にもメジャーリーグの試合をライブで放送していた時期がありました。

メジャーリーグ中継中のテレビイラスト

ライブだとイギリスでは夜中の中継になります。まだ、MLB.com(メジャーリーグのホームサイト)でのネット中継が始まる以前の頃です。

多少なりとも需要があったからこその番組だったと思います。

僕の友人や野球チームの仲間はみんな、この中継を楽しみにしていました。しかし、やがて、この番組はなくなります。

MLB.comで全試合のライブが見られるようになると、野球好きは、MLB.comを利用するようになりました。

これにより、テレビで放送している野球の試合を、たまたま目にするという機会はなくなってしまい、野球になじみのない人が野球を知る、という機会もほぼなくなってしまいました。

ですが、昔、偶然、テレビで見たメジャーリーグ中継で野球に興味を持ち、自分でもプレーしてみたくなったと言ってチームに加わってきたイギリス人が複数人います。

チャンネル5でやっていたメジャーリーグ中継は、多少なりともイギリスで、野球ファンを生み出す一つのきっかけになっていたと思います。

また、各、地元野球クラブが、近所に住む子供たちに野球を教えて、小さい頃から野球を知ってもらうという地道な活動もしています。

普通のイギリスの子供で野球を知っている、野球をやりたい、という子供たちも僅かずつ、僅かずつですが増えています。

地元野球クラブが開催する子供向けの野球教室や、チームにもたくさんの子供が集まってきます。

イギリス人の子供の中でサッカーではなく、(またはサッカーだけでなく)野球をしたいと思って集まってくれる子たちが、こんなに増えたということに驚きと嬉しさを感じます。

僕は17年、イギリスで野球をしましが、僕が始めた頃には、生まれたばかりだったチームメイトの子供が、幼児・年少者向けのポニーリーグを経て、U17のチームでプレーしている姿を見ると、ちょっと感動したものです。

イギリスで夢の野球イベント<2019年ロンドンシリーズ>開催まで

野球人気を高めるための地道な活動

イギリスでの野球人気の高まりは、実際、継続的微増、といった感じで、爆発的にファンが増えるといった現象はありません。

しかし、野球をメジャーなスポーツにするためのプロモーションは地道に続いています

地元野球クラブが開く野球教室以外に、例えば、シーズンの始まりには、開幕試合に地元自治体の議員に始球式を行ってもらい、地元誌にとりあげてもらう、などといった活動もあります。

英字新聞に載った野球の写真

また、何かしらの縁(*アメリカにいたことがある *親がアメリカ人で野球が好き *昔、チャンネル5でメジャーリーグの試合を見てファンになったといったなど)で野球やMLBに興味を持ったイギリス野球ファンのコミュニティが野球を語り合おう、広めよう、とう呼びかけやイベントをSNSを通して行っています。

アメリカ・メジャーリーグには、MLBジャパンのように、MLBヨーロッパという組織があり、イギリスを含むヨーロッパの野球市場に大きな期待をしています。

イギリスにおける地道な野球プロモーション活動とMLBの期待もあり、2019年、ヨーロッパ初のメジャーリーグの公式試合、ロンドンシリーズとして、開催されることになりました。その大きな布石となったイベントとして2017年のホームランダービーがあります。

2017年ホームランダービー

2017年7月4日アメリカ独立記念日。ロンドン・ハイドパークにてMLB主催ホームランダービーショーが行われました。

2017年ロンドンホームランダービー会場
ハイドバークで行われたホームランダービー会場のステージ

ショーには、かつてのメジャーリーグのスター選手、カルロス・ペーニャ、クリフ・フロイド、ショーン・グリーンが参加しました。

イギリスからはイギリスを代表するクリケットの選手ジョス・バトラー、アレックス・ヘイルスが参加しました。

それから、イギリス人野球プレーヤー代表として、その頃、僕が所属していた野球チームのナンバーワンスラッガーも参加しました。

参加選手全員が、レッドソックスチームとドジャーズチームに分かれてホームランを競う形式です。

元メジャーリーガーと対抗するのに、クリケットや草野球チームのプレーヤーが出てきます。イギリスの野球人口の乏しさ、未だ発展途上であることが想像できると思います。

イギリスには100万人以上のアメリカゆかりの人たちがいるそうですが、彼らの祭日であるアメリカ独立記念日に、このイベントを開催したのも、そうすることで、多くの来場者と大きな盛り上が期待できたからだと思います。

このホームランダービーは6月の終わりくらいからネットなどを通して、盛んに告知され、当日は、期待通り、ハイドパークに作られた会場に沢山の野球ファンが来場しました。

バッティングケイジ、ストラックアウト、屋台やキッチンカーなども設置され、大変な賑わいでした。

2017年ロンドンホームランダービーでの食事
会場で売っていた食べ物。思いっきりジャンキーです。

ご贔屓のMLBチームのユニホームを着たファンも多かったです。

少なくともロンドン近郊にある野球チームのメンバーはほとんど全員集まってきていた感がありました。バッティングケイジなどの運営を手伝ったり、中には自分たちのチームのメンバー募集のチラシを配ったり、という人たちもいました。

入場料は無料だったこともあり、具体的な来場人数はわからないのですが、このホームランダービーショーが大きな実績となり、2019年のロンドンシリーズへとつながっていきました。

なお、その後、ホームランダービーは、ホームランダービーXとなり、2022年、2023年にもロンドンその他の都市で開催されています。

まとめ

まだまだサッカーやラグビーとは比べ物にならない程にイギリスではマイナーなスポーツですが、野球の人気、人口は増えつつあります。

その背景にあるのは、イギリスにおける野球ファンの地道なプロモーション活動です。メジャーリーグ公式戦も開催され、今後、ますますイギリス、ヨーロッパで野球人気が高まることが期待されます。⚾

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